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【イベントレポート】SMALL BUSINESS LABO セミナー Minimal・山下貴嗣さん

#JIRIN#オンライン
2022.03.14
2022年2月12日、鹿猿狐ビルヂング3階・JIRINにて、SMALL BUSINESS LABO セミナーを開催しました。今回のゲストは、いま日本で最も勢いがあるスペシャルティチョコレートブランドと言っても過言ではない、「Minimal - Bean to Bar Chocolate - (ミニマル)」創業者の山下貴嗣さん。

30歳でMinimalの母体である株式会社βaceを起業し、世界最高峰のチョコレート品評会をはじめ、数々の大会でこれまで60を超える賞を受賞するなど華々しいご経歴の山下さんですが、実は起業当初チョコレートは全くの門外漢でした。

そんな山下さんが立ち上げた「Minimal」は、どのようにしてお客さんに愛されるブランドに育ったのでしょうか。本レポートでは当日お話しいただいた内容から、起業に大切な心構えや、事業を進めるなかでのヒントをご紹介します。

チョコレートの素人から、日本的なチョコレート造りで世界へ挑戦

「もともとはチョコレートの“チョ”の字も知らなかったんです。だって最初はつくり方をWikipediaで調べたんですよ(笑)? でもそんな僕でも、いまはこんな風になれている。皆さんも今日から一歩踏み出して続ければ、何かのプロフェッショナルに絶対なれます」

イベントの中で何度も、そう熱い言葉を贈ってくださった山下さん。そもそも起業するまでは経営コンサルティング会社で会社員をされていて、チョコレートに関しては全くの素人だったそうです。

そんな山下さんが30歳で起業を決めた際、自身のテーマにチョコレートを選んだ背景には、ある想いがありました。

「僕、本当に日本って素晴らしい国だなと思ってて。だから起業のテーマを考えるとき、この国が未来永劫、グローバル社会でしっかりとプレゼンスを出していくための事業を漠然とやりたいと思ったんです。でも内需には限界があるので外貨を稼ぐしかないなと。ただし労働人口が減少傾向にある日本において量には限界があるので、質で稼がなきゃいけないと思いました」
そしてそんな想いに、山下さんが持っていたある確信が合流します。

前職ではクライアントのグローバル人材育成に向き合うことが多かった山下さんは、国際社会で「控えめ」「意見を言わない」など、なかなか認められない日本人の価値に疑問を持っていたといいます。

「お客さん先でいろんな会議に同席していた際、ハイパフォーマーの方を見ていると、決まって空気を読みながら参加者の気持ちをきめ細かくケアして、そうやって物事を前に進めていたんですね。この、空気を読んで全体の和を重視できることは、日本人の強みだと思ったんです」

「日本固有のきめ細やかさをベースにした思想・技術の活用をして質の高い商品サービスを提供できれば、日本のプレゼンスを発揮しながら、ビジネスチャンスに繋がるはず」。そう確信した山下さんは、もともとご自身が興味を持っていた味覚や発酵などのキーワードから食の分野をテーマに検討。

当時、クラフトビールやスペシャルティコーヒーなどの市場が伸びていたことから「つくり手の顔が見えるクラフトや、素材の良さを表すスペシャルティといったキーワードで、洗練されたデザインを持つブランドが市場を牽引している」と考え至ります。そして、その分野に近しいアプローチで勝負ができそうな「スペシャルティチョコレート」をテーマに決めたと話されました。
提供:株式会社βace

三角形の二辺は一辺より短い

挑戦したいテーマは決まった。でも、失敗しないようにとあれこれ考えていると、なかなか前に進めない。起業を検討されている方に限らず、普段の仕事においても、そういった覚えがある方は多くいるでしょう。

そんな私たちに山下さんが差し出してくれたのが、「三角形の二辺は一辺より短い」という言葉でした。前職で言われていたものだそうで、山下さん自身も今でも意識しているといいます。

「普通に考えたら一辺のほうが短いですよね(笑)。でも、これは比喩というか。起業で一番大事なことって、一歩踏み出すことなんですよ。一歩踏み出すっていうのは行動することです」
当日の発表スライドより
「例えばこの図で、A地点にいる人が考えるのは★(星)までの最短距離ですよね。人間って失敗したくないので、100点を目指して思考するんです。ただなかなか正解が見つからないから、みんなA地点で足を止めてしまいます。でも、例えばとりあえずB地点に行って、そこから★へ軌道修正する方が結果的には早く到達できるかもしれません。

みんな失敗が怖いので絶対に失敗しない方法を探すんですけど、恐らく挑戦する前にそんな方法を見つけるのは無理なんですよ。だからまずは考えて、60点、70点くらいのある程度のところまで思考が行ったら、とりあえずやってみる。で、やってみた後、そこから軌道修正する方が、結果として早いんです。

ここで大事なのは行動することです。そもそも動かないと、その行動が目的に対して良かったのか悪かったのかわからない。実は99%の人が頭で考えるところで止まり、行動しないので、どんな形であれ行動した人はその時点で1%に入れます。僕らがクラフトチョコレートの先駆的なブランドになれたのは、他の人よりほんの少し早く一歩を踏み出したからも一つの理由。できるだけ早くスタートして、高速でPDCAを回せば、後から入る人に圧倒的に差を付けられるんですよ」
この事例として挙げてくださったのが、Minimalスタート時のエピソードです。

チョコレートはバレンタインが最も稼ぎ時。その前に控えるクリスマスも視野に入れるとなると、12月1日にはブランドをスタートすべきと考えた創業メンバーは、何と8月に登記をした後、わずか4か月しかない期間でブランドを立ち上げきると決めたといいます。

「いま考えたらもちろん無茶な話なんですけど、やり始めたらもうやるしかない。だから夢中でやる。そうやって、考えすぎずにスタートをきったことが良かったんですよね。『考えながら走りましょう。走りながら考えましょう』という話ですね」と山下さんは笑いながら話してくださいました。

「動いてみて、改善する。そうすると失敗じゃなくなります。早く動いて違ったらやめればいい。そのほうが絶対に事業は上手くいきます。早く始めて一生懸命やれば、人はどこにでもたどり着けるんです。ただ注意点は、60点か70点くらいまで思考しておくこと。何も考えずに行動するのは無謀や蛮勇になってしまいますし、全く考えていないと適切な軌道修正(失敗から学ぶこと)ができません。

ぶっちゃけ、最初は上手くいかないことのほうが絶対多いんですよ。みんなが100点の方法を考えてわかるんだったら、全員100点をとってますよね。そもそも最初から100点をとるのは難しい。上手くいくにはタイミングもあります。だから、タイミングを逃さないためにも、ある程度考えたら一歩踏み出してみて、とにかくまず始めるんです」

登りたい山を決める

当日の発表スライドより
起業後にあるのはもちろん、事業の運営。Minimalではミッションを「チョコレートを新しくする」と置き、日々その実現ができるよう進めておられます。

例えば一般的なチョコレートと違って、Minimalではカカオと砂糖のみを使ったチョコレートしかつくりません。一般的なチョコレートが「足し算」だとすれば、Minimalのチョコレートは「引き算」。脂を足していくフレンチのような発想ではなく、シンプルな素材で繊細な味を表現する和食のような、日本的なチョコレートをつくっているのも、「製法と風味を新しくする」と、ミッションに沿ったものづくり故です。

またコロナ禍以前はカカオの産地である南アフリカなどへ年間4か月以上も滞在し、産地を見て回っていたという山下さん。経営者自身が産地に滞在し、かつフェアトレードで買うというMinimalの在り方は、経済合理で考えると利益構造を圧迫するため、普通の企業は選択しないでしょう。

でもそれも、「生産者との関係を新しくする」というミッションに向かった意思決定の一つなのです。
「事業にとって大事なことの一つが『登りたい山を決める』こと。僕たちはチョコレートを新しくするために、世界一のチョコレート工房を目指すと決めました。だからいま職人とは、『世界一を目指すのに、そのレベルでいいんだっけ?』といったコミュニケーションをとっています。本当にチョコレートを新しくして、それを文化にしていくなら、多くの人にチョコレートを届ける必要がある。だから世界一を目指すんです」

「カカオ農園に行く」のは、チョコレートに関わる経営者のうち、恐らくほとんどの方がしていないこと。しかし山下さんは、産地に未来があると疑いません。ーー日本らしいきめ細やかなものづくりを体現する、素材を活かしたチョコレートづくり。Minimalが提供するチョコレートの強みとなっている果実のような香りや味わいは、カカオにこだわっているからこそ実現するものです。

「カカオ農園には誰でも行ける、けれど誰も行かない」「自分たちがいま世の中に与えられるインパクトは小さいかもしれない、でも信じて実行し続ける」。

そうやって誰もしないことを未来に向けて続けた結果でしか、たどり着けない未来がある。チームMinimalは、そう考えて今日も明日も、少しずつアップデートを繰り返しながらチョコレートを新しくしていくのです。

「僕も最初から世界を目指していたわけではなくて、8年間続けていたら『遠いけど世界一に挑戦してみたいな』と思ったんですよね。別に皆さんに世界を目指せというわけではなくて、要は夢とかビジョンが大事ということ。これが一歩踏み出すときの勇気になってくると思います」
「まあでも、イイことを言っているように聞こえますけど、やりながら見えてきたこともいっぱいあります。僕、最初からちゃんと考えているように見えるじゃないですか(笑)。でも、当時は何にも考えてなかったです。

ものづくりがしたかったのも『ものづくりってカッコいいな』って気持ちからだし、しかもチョコレートってモテそうですよね(笑)。チョコレートを選んだ理由って、本当にそのくらいで。誰かを誘って何かを考えていくプロセスのなかで、目的や手段を整理していきました。でもそれでいい。最初は勢いでもいいんです。勢いって、興味とか好きとかって気持ちから生まれるものだから、その根幹があることが大事です。それがあれば後からちゃんと整理して、目指す方向を決められます」
提供:株式会社βace

これから挑戦する方へひとこと

セミナーの最後には、いまから一歩踏み出そうとしている方に向けて、山下さんよりメッセージをいただきました。

「ぜひこの後、今までしていなかった何かを行動に移してみてください。アウトプットがついてこないと、人は学習しないんですよ。自分が聞いたこと、学んだことを何かの行動に変えて、自分の中に根付かせていくんです。そこから次のヒントが見つかって、ご自身の行きたいところへ近づける。

僕は、本当にただの凡人です。今日の話は、そんな山下でもやり続ければちゃんと何かに近づいていったって話だと捉えていただいたら嬉しいなと思います」
考えることはとても大切。でも考えすぎて行動に移せなければ、結果は何も生まれません。ある程度まで考えたら、あとは恐れず挑戦してみる。そして、行動を続けながら改善を重ねていく。山下さんのメッセージを皆さんの「勇気」に変えていただければ、N.PARK PROJECTも嬉しく思います。

山下さん、本当にありがとうございました!

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文:谷尻純子(中川政七商店 編集・広報)
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