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菩薩咖喱#06

3期目を終えた菩薩咖喱の店主と考える「経営を進化させるために、次に挑戦すべきこととは?」

GROWTH
2023.04.24
N.PARK PROJECTの第一号として支援をしたスパイスカレー店・菩薩咖喱。2期目から黒字化し、3期目となった2022年度も黒字に終わるなど順調に経営を進めていますが、店主の吉村萌々さんには、反省点や課題感も多くあるようです。

「奈良をカレーの総本山にする!」をビジョンに掲げる菩薩咖喱は、目指す世界へ向かうため、次に何を考え、実行すべきなのでしょうか。コンサルティングを担当した中川政七商店 会長の中川政七と、3期目を終えたタイミングで一年の振り返りを行いました。
菩薩咖喱(ぼさつかりー)
奈良市のならまちエリアにあるスパイスカレー専門店。「奈良をカレーの総本山にする!」というビジョンを掲げ、豆のカレーを基調とする定食スタイルの「ダルバート」を提供している。2018年からイベント出店をスタートし、2019年に間借り店舗、2020年に実店舗をオープン。実店舗オープン前から、中川政七商店の「N.PARK PROJECT」によるサポートを受ける。

目標設定の際のポイント

中川政七商店・中川政七(以下、中川):
2022年度もお疲れさまでした。3期目が終わりましたね。結果はどうだった?

菩薩咖喱・吉村萌々(以下、吉村):
今年も色々とサポートしていただき、ありがとうございました。実績でいうと、総売上は去年から6%微増していて、部門別で見ると店舗の売上は100万円プラスでした。ただ例えばイベントや物販のような他部門での売上が伸ばせていないのと、店舗の通常営業も、移転したので場所的にもっと伸びるかなと思っていたんですが、意外とそうでもなくて。

あと……収支は黒字だったんですけど、淳さん(中川政七)と決めた「出世払い」(※)のラインには、あと2万円ほど足りなくて届きませんでした。払いたくなくて2万ごまかした……みたいなことでは絶対にないんですけど。

中川:
大丈夫、それは分かってる(笑)。そもそもイベントは抑えていく意思でやってたもんね。物販、つまりスパイスキットの売上が伸びていないのは特に手を打ってなかったから? 今後は手を打っていきたいと思ってる?

吉村:
焦って手を打つべきではないと思い、いったん何もせずにステイしてみた結果がこれでした。自分としては、店舗の売上と同じくらいに伸ばしたいとは思ってなかったですね。どちらかというと通常営業を伸ばしたいので。

ただ2022年度の物販に関しては出来ることさえもしてなかったので、そこは2023年度では手を付けていきたいと思っています。
中川:
物販の売上は落ちているけど本流ではないし、全体売上の中のパイもそんなに大きくないから、注力しないというのは僕も賛成です。本流を伸ばしていく流れのなかで打てる手はあるだろうけど、これ単体を伸ばそうという意識はなくていいと思う。あくまで注力はお店の売上だと、そこのジャッジができているのは素晴らしいと思うよ。

まあでも、物販は何もしないとこうなります。発売当初は売れて、何もしないと必ず翌年7掛けくらいになって、その翌年はまたさらに落ちていく。今だと売上の6%くらいが物販だけど、どんな手を打とうと思ってる?

吉村:
今期の取り組むことの一つとしてInstagramの強化を置いていて、スパイスキットもその中でPRしていこうかと考えてます。今はパッケージに情報が少なくて、例えばどうやって作るのかが分かりにくいので、スパイスキットで作ったレシピをリール動画で載せるとか、そういう努力をしていきたいです。

中川:
なるほど、そうやって考えられているのはいいことだね。Instagramのフォロワー数目標は立ててるの?

吉村:
2022年度は立ててなくて。2023年度は立てて頑張ります。

中川:
うん、それがいいね。最終的には売上の目標を追うんだけど、その下に、間接的ではあるけど、売上につながる大切そうな指標がいくつかあるんじゃないかと。例えばInstagramのフォロワー数とか、食べログやGoogleのレビュー数とかね。

間接的にしか手は届かないし、それが上がることが売上にどう関係するかはロジックでは見えにくいけど、たぶん関係はあるじゃないですか。そこには目標設定をしたほうがいいんじゃないかなと思います。間接的に関わってくる重要指標というのかな。

じゃあInstagramのフォロワー目標は立てるとして、食べログとかGoogleのレビュー目標はどうする?

吉村:
そうですね……。例えばGoogleだと、レビュー数が増えるほうが多くのお客様の色々な価値観での判断になるので、星の数は下がる感覚があって。以前だと4.5のときもあったんですけど、今はレビューが増えて4.2になっているんです。もちろん良い料理を提供したり、接客を磨いたりすることが大事なことはわかりつつ、この星の増やし方は難しいなと感じるのが本音です。なので、目標設定をするのがいいのかどうか……。
中川:
なるほど。じゃあ食べログとGoogleのレビューはいったんウォッチでいいと思うけど、数字をつけておくことは大事だよ。それが積み重なると、お店の売り上げ推移について、実はInstagramは相関がなくて、食べログには相関があることがわかってくるかもしれんやんか。

気乗りがしないなら今は注力しなくていいけど、そうやって見ていくと、気乗りする・しない、なんて話じゃないことが分かるかもしれない。だから定点観測としてつけておくことは大事だと思うよ。

売上と相関しているのが意外なものだった、みたいなことはよくある話で。それは数字をつけておかないと分からないからね。数字をつけ続けることで、何かが見えてくるかもしれないよ。それを長年溜めていくと、すごく役に立つから。

吉村:
そうですね、つけるようにします! あとはここ最近、その日の天気や気温、入っているスタッフ、売上を書く日報もつけ始めてて、それも続けていくと今後の材料になるかなと思っています。

中川:
いいことだね。つけた数字を何に活用できるかが大切で、そこを意識してみるといいと思う。食べログの評価を上げるというのは、何らか手が届く話。でも天気や気温は自分では変えようがなくて、全く手が届かない話だよね。

でも、じゃあ意味がないかというと、ロス率とか仕込み数とかに役に立つんじゃないかなと思います。食べログのレビューは定点観測しておくことで売上に作用できる可能性があるけど、一方で天気や気温はロス率へ役立てる、のように、最終的に何に使うかの意識をもってつけたほうがいいよ。

吉村:
はい! 
※「出世払い」とは…
経営コンサルティングを始める際、通常であれば頂戴する基本料金を、菩薩咖喱では無料としていた。これはN.PARK PROJECTとしても初の事例であったことの他、立ち上げ期で資金に余裕がない時期でも、志がある事業者を支援したいとの想いから決めたもの。通常のコンサルティングフィーに代わって約束をしていたのが、「売上が損益分岐点を超え、経営に余裕の出る額に達した際に“出世払い”をしていただく」ということだった。毎年の年次決算で目標額に達したら、売上の1%をいただくと両者で取り決めていた。

未来を見据えて、整えておくべきこと

中川:
物販の話に戻るけど、新商品を出すのってハードルは高いんだっけ?

吉村:
スパイスはお店にあるし、自分でレシピを考えるので開発自体は高くないです。ただ新メニュー用のパッケージデザインとか、印刷とかを考えると、そこにハードルがありますね。

中川:
そうか。でも今ある3種類のうち、あまり売れてない商品のロットが変わるタイミングを見極めて、新商品を出すのが刺激策としてはいいかもね。新商品が出ないと、いくら切り口を変えてPRしても売上はしんどいままだと思うので。売上の中のシェアで見ると6%程度だけど、馬鹿にできない数字だし。

物販はそこまで労力をかけずとも勝手に売れていく側面もあるやんか。ただ、パッケージのロットが関係してくるからタイミングがあるので、狙って準備しておかないといけない。そこは考えてみて。

吉村:
そうですね。考えてみます。
中川:
他に今期、戦略的に取り組みたいことを教えてくれる?

吉村:
一つは、料理教室を始めるための準備をしたいと思っています。実店舗でやるのかオンラインでやるのか、ライブでやるのか録画でやるのかのような詳細はまだ決まっていなくて、今年色々挑戦してみて、見極めと準備をしておきたいなと。あとは料理教室の要素を入れたYouTubeチャンネルの開設を検討しているので、そこに向けて準備もしておきたいなと。

中川:
うんうん。菩薩咖喱をスタートするとき、最終的には3店舗にしたいって言ってたよね。それに関連してブランドポートフォリオ的視点で言うと、全く別々のお店が3つあるんじゃなくて、例えば全部に「菩薩」ってつくとか、共通の要素があればいいなと。そこを考えたうえで、YouTubeチャンネルにも名前をつけるとか、チャンネル内でやることを決めるとか。

その共通基盤が強いと、2店舗目や3店舗目は、1店舗目より強いところからスタートできる。長い時間軸での目標を考えながら、今年どうするかを考えるのもめっちゃ大切です。

そう考えると、共通基盤を何にして成立させるのかだよね。菩薩咖喱で統一するのか、実店舗の店名を全部変えるなら「吉村萌々」で成立させるのか。それを今考えておくと、今後広がっていくときにグチャグチャにならなくていいと思います。

吉村:
今後について今、少し妄想をしていて。今の店舗が住宅地にあるので、音楽のような大きな音の出るイベントが出来ないというのもあって、音を出せるお店が欲しいなと。それで、スナックの居抜き物件を探してるんです。夜にふらっとカレーを食べに来れて、音を出せるイベントもできる、「スナック菩薩」を出したいなって。

中川:
そうか、それだけ考えられているなら菩薩をキーにするでいいと思うよ。ただ、菩薩だけだと何屋か分からないから「カレースナック菩薩」はどう? 菩薩という固有名詞とカレーというコンテンツを外さないようにしていくと共通基盤も作りやすいし、広がりやすくていいと思うので。

吉村:
そうですね、ありがとうございます。検討してみます!

法人化、いつすればいい?

中川:
ところで収支面の話だけど、提出してくれた会計の数字から見ると、移転前の店舗の時に借りた金額の返済分って、今も減価償却として毎月で割ってつけてるのかな?

吉村:
そうですね。7年で返済する前提で毎月に割ってつけていて、2年分は返済済みなのであと5年残っています。

中川:
なるほど、本当はそれは「特別損失」なんだよね。キャッシュを返し続けるというキャッシュフロー計算書(C/F)の話と、前の店を退店したときに、残りの返済分を特別損失として上げる損益計算書(PL)の話は、管理会計としては分けて考えたほうがいい。

そうしないと、今のお店の本当の実力がわかりにくくなるんだよね。前のお店の返済を今の店舗が背負う必要はなくて、新店用に借りた金額を、決められた期間で返す数字を引き直しましょう。

あとは、補助金の考え方だね。店舗のPLを見ようと思ったら、補助金は「営業外収入」として分けて考えたほうがいい。補助金を入れて計算してしまったら、管理会計として店舗の実力を見誤ってしまうからね。

今は個人事業主だから青色申告だとキャッシュフローベースの付け方になるのはわかるんだけど、そうすると菩薩咖喱の収益が正しく見えなくなることもある。

だから、例えば法人化を検討するのも一つだと思うよ。青色申告をしながらキャッシュフローを見て、一方で管理会計のためにPLをつけてって、大変やんか。だからもう、法人化してPL一本で見るようにするのも手だと思います。
吉村:
法人化って、今のタイミングでもしていいものなのでしょうか?

中川:
法人化のタイミングは一般的に、売上3000万だとか5000万だとか言われるんだけど、それって税金のかかり方で提案される話。例えば今後ずっと法人化しないって決めているなら、青色申告のままでいるのも一つの道なんだけど、吉村さんは今後2店舗目、3店舗目を展開したいって言ってたし、法人化は絶対に通る道だと思うんだよね。

税金のことはあるけど、法人化した方が色々数字が見やすくなって、経営がやりやすくなる。あとは「特別損失で落とすべきだ」とかは、法人だと税理士さんが教えてくれるし。具体的に法人化すると、個人事業主のまま進めるのと、どの程度の税金や経費が変わるのかは税理士さんに確認しつつ、考えてみて。

吉村:
そうですね。税理士さんに一度相談してみます!

中川:
でもちゃんと経営をやれているし、自信を持っていいと思うよ。経営者としては合格です。補助金を活用しない状況でも利益は出ているし、これだけを見ると次の店舗も出来る力はあるということ。

吉村:
今年こそは「出世払い」のボーダーラインを超えられるよう、一つひとつの戦略を確実に実行して頑張ります!

中川:
うん、今年も期待しています!

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INFO

菩薩咖喱(ぼさつかりー)

営業時間: 11:00-16:00 (L.O. 15:00)
定休日: 月曜日・火曜日
住所: 奈良県奈良市薬師堂町21
公式サイト: ホームページ / Twitter / Instagram / note

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文・写真:谷尻純子

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