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堀内果実園#02

コンサルティングで得たものと捨てたもの

DEVELOPMENT
2020.11.01
奈良県五條市西吉野町は古くから柿の栽培が盛んに行われてきた地域です。堀内農園(現、堀内果実園)は創業明治36年。現在は6代目の堀内俊孝さんが跡を継ぎ、農薬使用を約5割に抑えた特別栽培で柿、梅、すもも、かりん、ブルーベリーなどを栽培しています。

若者の果物離れや、天候によって収益が大きく左右される農業のあり方に疑問と危機感を抱いていた堀内俊孝(ほりうち としたか)さんは、奥様の奈穂子さんとともに約20年前から加工品を開発してきました。しかし、法人化のタイミングで売上や雇用のことなど抱える悩みも多かったと言います。

そんな時、堀内さん夫妻がコンサルティングを依頼したのが株式会社中川政七商店(以下、中川政七商店)でした。ブランドの顔ともなるロゴ、ネーミングやホームページ開発、商品開発のサポートを受け、販路は飛躍的に拡大し今では奈良と大阪にカフェを2店舗、東京に物販の直営店を1店舗を持つまでに成長しました。

いち老舗農家であった堀内さん夫妻がどのような経緯で中川と出会い、どのような支援を受けてフルーツを核とするビジネスを展開するに至ったか、前・中・後の3編でお届けします。
堀内果実園(ほりうちかじつえん)
奈良県南西部の五條市にある農園。明治36年の創業以来、柿・梅などを中心に果樹栽培を専門に行う果樹農家。2012年に中川政七商店のコンサルティングを受け堀内農園から堀内果実園として生まれ変わり、現在ではフルーツの生産、加工品の製造・販売、「くだものを楽しむお店」をコンセプトにしたカフェの運営までを手がけている。

中川政七商店との出会い

加工品のラベル統一にデザインの課題を抱えていた堀内さん夫妻は、かねてより柿チップの卸を通じて取り引きのあった中川政七商店が主宰する「大日本市 合同展示会」に出かけました。2011年2月のことです。

「手渡されたフライヤーのデザインが凝っていて、とても素敵だったので『良いデザイナーさんを紹介して頂けるかも』ぐらいの気持ちで行ったんです」と奈穂子さんは言います。その時、中川に会った堀内夫妻は、私たちもあんな感じでデザインをして欲しいと言うことを伝えたものの、当時は工芸ではないということでコンサルティングを断られました。

それから約1年、デザインの課題を悶々と抱えたまま日々の農作業や加工品製造・出荷にいそしんでいたある日、奈穂子さんらは中川に1通のメールを送りました。「やはりデザインを何とかしたくて、改めてコンサルをお願いしたいですとメールを書くと、決算書や確定申告書を持って本社に来てくださいと返事を頂いたんです」と奈穂子さんは言います。
堀内夫妻が持参した申告書を見た中川は「すごく健全じゃないですか」と評価しました。そしてその健全な売り上げをさらに上げていくためのコンサルフィーも同時に提示しました。

純粋なコンサル料に加えてホームページや会社のロゴなど制作物もあるので、総額としては想像していた金額の倍以上。

ふたりは躊躇しましたが「今やらな、どうするん?」と奈穂子さんは自分たちをふるい立たせるように、コンサルを依頼することを決めました。そして住まいのリフォームのために貯めていた貯金を、コンサルに費やすことにしました。まさに人生をかけた決断でしたが、決め手になったのは中川政七商店の実績でした。
NAKAGAWA’s eye
リフォーム費用をコンサルフィーに充てたと言う事実は数年後に初めて知りました。笑
多くの場合、コンサル費用は厳しい経営状況の中から捻出されるものなので、絶対に失敗できない、結果責任を追っているつもりでコンサルティングを行っています。
基本のスタンスは、「自分がその会社の社長ならどうするか」です。
「中川さんが家業を継がれてからの快進撃と会社の変革の様子を目の当たりにして、すごいなと思ったんです。また同じ奈良にそんな人がいて、動いておられて。私たちも同じように動きたいと思ったんですね。それに人生を後悔しないように生きるなら大きな決断を下さないとダメなんですよ」と奈穂子さんは言います。

デザインツールからブランディングの話

2012年9月。かくして中川政七商店によるコンサルティングが始まりました。まず取り掛かったのは加工品のパッケージに使うロゴ。しかし初回打ち合わせからブランドが目指す方向性を検討しているうちに、グラフィックツールの作成だけにとどまらず、堀内農園全体のブランディングの話に波及しました。デザイナーは若手ながらも多業種のデザインを手がける「EDING:POST」の加藤智啓さんを紹介してもらい、デザイナーを交えて名称を絞り出して行きました。

中川は大手卸を通して流通する青果は単体の農家だけではブランドになりにくいことを踏まえて加工品に着目しました。またご主人の俊孝さんは柿だけに限定せず、果物全般を扱っていきたいという希望持っていたため、すでにあったドライフルーツの技術を活かし「国産ドライフルーツといえばここ」というブランドとしての唯一性のあるポジションが導き出されていきました。
NAKAGAWA’s eye
いまでこそ堀内果実園のブランドで展開している商品は多岐に渡っていますが、当初はドライフルーツに絞っていました。勝負するアイテムを何にするか?が最重要ポイントでした。
すでにお客さんが認知しているフルーツ関連のブランドってなんだろう?と考えた時に、名前が上がったのは小売店の名前ばかりでした。つまりお客さんは果物を買ったお店でしか記憶していないのです。スーパーでは生産書の顔が見えるように「〇〇さんのりんご」とPOPで掲示していますが、家に帰って食べて美味しい!と思った時に思い出せるのは〇〇さんの名前ではなく、スーパーの名前なのです。
なので極論、「青果ではブランディング出来ない」と言う結論に達しました。(産地ブランドであれば可能ですが)
そこで加工品で何が1番可能性があるのかを考え抜いた末に決まったのが「ドライフルーツ」だったのです。
従来製品の柿チップに加えて、みかん、りんご、キウイ、すももなど全部で8種類のドライフルーツを製造することが決まりましたが、堀内さんたちは葛藤を抱えていました。ドライフルーツの中にはりんごやキウイ、みかんなど、自分たちの農園で育てていない果物がありました。それらを商品として販売していくとなると、他の農家から仕入れるほかありません。

「よその農家さんから果物を仕入れるというのは、農業がちゃんとできてない農家だというイメージがあったんです。だけど、お客様視点で考えると柿のドライフルーツだけだと、柿が好きな人にしか見てもらえない。いろいろフルーツがあって選べるという選択肢があって初めて商品棚の前に立ってくれるんですよね。ブランド開発では改めて第三者の視点と自分たちの思いの違いに気づき、第三者の視点を取り入れて自分たちの職業を見直すことを教わりました」と奈穂子さんは言います。
NAKAGAWA’s eye
生産サイドからすると、
自分たちの手で作れるもの=ブランドの限界
と勘違いしがちです。
しかしブランドの本質は「お客さんの頭の中でどう認知されるか」であり、その認知とは、ポジションでありアイテムのことです。
故にブランディングの最初の一歩として自分たちは何屋であるかということを決めなければなりません。
奈穂子さんたちが農家の視点から消費者の目線に立ったこの時、いち農家という立場から「堀内果実園」として目指すべき方向に大きく舵を切る瞬間でした。

こうしたラインナップを見据え、まずブランド名が「堀内果実園」に決定されました。「果樹園という案も出ましたが、聞き覚えのある言葉にはしたくないという思いが主人にはありました」と奈穂子さんは言います。

次に商品パッケージやホームページなどの顔となるロゴの制作に取り掛かりました。堀内果実園の柿畑には、先祖代々植わっている樹齢120年の柿の木が何本もあります。太い幹。何メートルも這わせる枝。その姿は堂々として安らぎすら感じる程です。デザイナーの加藤さんはとても象徴的なこの柿の木をメインモチーフとしていました。
とても大きな柿の木がメインになったビジュアル。そして中央に「堀内果実園」の文字。緑豊かで果実が実る様子を的確に捉えたデザインが提案され、その案を第一候補に細かなデザイン調整などが進められていきました。

しかし、心のどこかではそこまで木を目立たせたデザインにすることへの違和感もありました。会議でもう一度話し合い、改めて加藤さんがデザインを再考することになりました。

そして最終的には堀内果実園という社名を目出たせたかわいらしいデザイン案が再びデザイナーから提示されました。
パッケージにもこだわりました。みかんネットをモチーフにしたイラスト入りの袋に紐をつけ、上から吊せるようなデザインになりました。また中川のアイデアで、ギフト展開を視野に入れたギフト用のオリジナルボックスも作成することになりました。

コンサル開始から5ヶ月経った2013年2月。全力疾走の準備期間を経て、東京・有明で開かれた合同展示会「大日本市」で、装いを一新した堀内果実園のラインナップが満を待してデビューすることになったのです。

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INFO

堀内果実園

堀内果実園
奈良県五條市西吉野町平沼田1393
https://horiuchi-fruit.jp/
facebook https://www.facebook.com/horiuchi.fruit.farm/

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文:Hemmendinger 綾 写真:奥山晴日

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