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LABO103#03

軽やかに、進むべき道ではなく、進みたい道を決めていく。ー「LABO103」オーナー・垣内さんのこれから

RELEASE
2021.08.18
かき氷の聖地とされる奈良県において、繊細で美しい見た目と味のセンスで他店と一線を画すかき氷とスイーツの店「LABO103」。サイトを開ければすぐに予約枠が埋まり、時にはサーバーダウンも起きるという人気店です。

オーナーの垣内祐紀子(かいと・ゆきこ)さんは奈良県は明日香村で育ち、高専卒業後、パティシエやドルフィンスイムガイド、医薬品研究職、飲食店マネージャーを経て独立。

一風変わった経歴のように感じるかもしれませんが、話を伺うとそのどれもが今の垣内さんらしさへとつながる大切なステップであり、どの職においてもストイックな姿勢がキーワードとなっていることがわかります。

前職では、全国でもトップを争う忙しさの店舗への配属や、連日深夜まで続く商品開発を経験。他の人が避けて通るような働き方でさえも、「自分を育てる楽しい経験のひとつで、辛いと思ったことは全然ないんですよ」と明るく話します。

多くの人に愛される唯一無二のお店をつくりあげる垣内さんに、その時々で考えていたことや、お店をつくるにあたってのこだわり、また今後について伺いました。

前中後編でお届けするなかの、本記事は後編です。
LABO103
奈良県の近鉄学園前駅近くに構える、かき氷とスイーツのお店。カウンター6席と小さなお店ながら全国からファンが訪れる人気店で、季節ごとに変わるかき氷やチーズケーキが楽しめる。季節の果物や野菜、ハーブなどを組み合わせたメニューには、オーナーである垣内祐紀子さんのセンスが存分に表現されている。完全予約制で、ハイシーズンは会員制というスタイルで営業。

妥協を許さない商品開発が強み

様々な職場で経験を積んだ垣内さんが、2019年3月に満を持してオープンしたLABO103。「ラボ」という言葉の印象通り、シンプルで洗練された雰囲気を持つ空間です。

取材を一切受けずともオープンから1週間で行列となったのは、派手な宣伝はせずメニューと空間の居心地で勝負する姿勢や、ストイックな商品開発への、お客さんからのダイレクトな支持と言えるでしょう。

「オープン1年目はもう必死で商品開発をやってましたね。二足の草鞋で平日は『お茶と酒 たすき』に勤務していたので、LABO103のメニューを開発できるのは土日の夜しかないんですよ。13時から21時までLABO103の営業をノンストップでやって、片付けして一息ついて、夜の23時とか24時から開発作業を進めて朝方にできあがるという時間の使い方でした。

早くできるときは一時間くらいでできますけど、組み合わせがうまくいかないときは、もう朝までぶっ通し。でも売上の波とかお客さんの予約の状況とか、波のキャッチが遅いと沈んでいってしまうので、そこの見極めには常に神経を尖らせていました」
NAKAGAWA’s eye
敏感に「お客さんの頭の中にあるLABOへの気持ち」を数字から感じ取ろうとしていることが窺い知れます。ブランディングを正しく理解されているな、と感じます。

このあたりに単にセンスがいいだけで突っ走っているわけではないことが分かります。
寝る間も惜しんで商品開発に時間を割いた垣内さん。妥協を許さず “おいしいこと” を追求する垣内さんの手からうまれるかき氷は、縁日の屋台で食べるそれをイメージした甘じょっぱい「焼きとうもろこし」や、甘さ控えめで大人の余韻を楽しめる「ラム酒仕立てのレーズンパイ」、ゆずの爽やかな香りと苦みが堪能できる「柚子レアチーズ」など、どれも個性あるメニューばかりです。

2店舗目、エスプレッソとチーズケーキのお店「宿雨」オープン

LABO103をオープンして約2年。2021年5月、垣内さんは自身2店舗目となる「宿雨」を、同じく近鉄学園前駅すぐの場所にオープンしました。こちらのお店はかき氷店ではなく、何とコーヒースタンド。気軽に立ち寄り、エスプレッソとチーズケーキが楽しめるお店に仕立てたといいます。
「宿雨」外観(設計:MIRROR / 田中 了多、撮影:西岡 潔)
ファーストキャリアをチーズケーキのパティシエとしてスタートしている垣内さんには、もともとチーズケーキのお店にチャレンジしたい想いがあったそう。かき氷だけではなく、次のお店では別メニューを扱いたいと考えていました。

「かき氷って体力的にも精神的にも緊張が続く結構なハードワークなんです。常にジェンガをやってるような感覚と言ったらわかりやすいかもしれないんですけど、本当に繊細で。1秒・2秒の差で全てが変わってしまうので、本当にやりたいとか覚悟をしている人でないと、つくっちゃいけないものだと私は思っています。それで今後、お店を任せていくこととかを考えると、かき氷以外での展開が重要だと」

かき氷ではない別のお店を次は出す。そんな構想を描いていた垣内さんは、前職の部下であり、現在は垣内さんの下で働いている牧恵輔さんの想いを活かしたお店をつくろうと考えました。

「牧くんはもともと『お茶と酒 たすき』時代の部下で、かき氷を削るのも上手な人です。私の退職後しばらくはあまり連絡を取り合っていなかったんですが、2020年の9月くらいにタイミングが合ってLABO103に入ってもらいました。

彼はもともとコーヒー屋さんを起業していた経験があって、ずっと、コーヒーがやりたい人。かき氷を削りながらコーヒーの話ばっかりするから、『じゃあもうコーヒーのお店つくっちゃうよ?』とか言って(笑)。それで宿雨をつくりました。

なので宿雨は人ありきですね。もともとチーズケーキのお店はやりたかったんですけど、彼がいなければ宿雨って発想には絶対至ってなかったです」
また、宿雨をつくるにあたり垣内さんがこだわったのは、尊敬するクリエイターたちのエッセンスをお店に取り入れること。

例えば、設計は友人でもあるMIRRORの田中了多氏に依頼。木を紺色に染色し、木目を“雨が降る様子や水溜りの波紋”に見立て、「宿雨」としての特徴的で唯一無二な風景と空間に。また、店内で使用する履物は奈良でヘップサンダルのアップデートに挑戦する「HEP」、照明は「NEW LIGHT POTTERY」、音響やロゴデザインは「sonihouse」など、同じく奈良のクリエイターたちがつくるものを積極的に採用しました。

「4年前にUターンで帰ってきたものの、奈良のことをほぼ知らない状態でした。LABO103オープンの時はオープンさせることだけで手一杯の状況でしたが、今回の宿雨については比較的落ち着いて物事を考えられる状況だったんです。

奈良を主軸に活動するうえで、奈良の事業者の方と一緒に全体で盛り上げたい思いがあったので、今回はほぼ奈良縛りで、素敵だと思ったクリエイターの方々にお声をかけさせてもらいました」

そう笑顔で話しながら、「まだまだ私の知らない方も多いので、今後は知見を広げて素敵な方たちとお仕事できれば」と奈良への愛をにじませます。

次は「工房」や「宿」へ

2021年7月現在、LABO103と宿雨の2店舗を運営する垣内さん。今後の構想を伺いました。

「今はLABO103の工房をつくりたいなと思ってます。実際の売上規模とお店が合わなくなってきちゃってて、例えば外に冷蔵庫を置かないとキャパが足りなくなってきてるんですよね。

だからちゃんとした工房をつくって、かき氷を提供するスペースと、シロップやチーズケーキの冷凍販売、そういう通販業務もできるような設備があればいいなと思ってるんです。併設でベイクショップがあってもいいかなとか。

宿をやりたい思いももちろん変わっていませんが、そもそも働いてくれるスタッフの中に、南部に住みたい人がいないとだめですよね。人によっては田舎疲れすることもあると思うんです。人がいないといいものはできないので、こっちは人材探しの旅ですね(笑)」
NAKAGAWA’s eye
事業があって人がいる、のではなく、人がいて事業がある。フラットな重心で経営されている感じが好きです。

根本的に人に対する興味・愛情がふかいのだろうなーと思いました。
やりたいことを想像はするけど、決めつけないし、縛られない、垣内さんの一貫した姿勢。

山登り型のキャリアを重ねるのではなく、偶然の出会いやそこで得た感覚を大事にしながら、進むべき道ではなく進みたい道を決めていく。垣内さんは「寄り道も存分に楽しみながら、感性や人生そのものを豊かにしていく生き方を選ぶ方」といった印象でした。

ただし何に向き合うときも決して手は抜かない。圧倒的な思考量や行動量、インプットのうえに積み重なった経験の深さが、寄り道を楽しむ心の余裕や、自分を信頼する強さに繋がっているのだと感じます。

手がけるものが何に変わっても、垣内さんであればきっと、これまでのスタンダードにとらわれず他にはない魅力をうみ出していくのだろう。職人気質と柔軟さを併せ持つ垣内さんの人柄や生き方のスタンスに触れ、そう、期待せずにはいられません。
NAKAGAWA’s eye
全編に渡り垣内さんの軽やかさ、明るさが感じられる素敵なインタビューでした。宿も早く見てみたいです。
これからも奈良に素敵な店をお互い増やしていきましょう。
僕もがんばります!

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INFO

LABO103

奈良県奈良市学園朝日町3-9−103
※完全予約制
公式サイト:HPInstagramFacebook

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文:谷尻純子 写真:奥山晴日

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