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北条工務店#03

家の魅力の伝え方を暮らし全体に拡張。マルシェ開催やホテル運営へ

RELEASE
2021.02.09
緑滴る木々に囲まれた、真っ白で凛としたたたずまいの建物。

近鉄富雄駅から8分ほど歩いた住宅街の中にあるこの建物は、奈良県で事業を営む株式会社北条工務店(以下、北条工務店)が2020年6月にオープンしたギャラリーです。

大きな窓からやわらかな陽の光が降り注ぐ開放的な室内に用意されているのは、カフェスペースやショップスペース。

そこは屋内なのに外にいるような、中と外の境界線があいまいになるほどに自然と建物が溶け込んだ空間です。

道路をはさんだ向かい側には、和モダンな雰囲気で重厚感のある1軒の平屋が。こちらは、同じく北条工務店の事務所です。

外観からして、世の中のいわゆる「工務店」とはかけ離れた印象を受ける北条工務店の仕掛け人は、4代目となる北条愼示(しんじ)さん、満李子(まりこ)さんご夫妻。

同社は現在、個人住宅や店舗の建築、リノベーションに加え、マルシェの運営や暮らしにまつわるスクールの開催、また先ほど紹介したカフェ・ギャラリーの運営なども手がけていますが、北条夫妻が経営に携わるまでは、何でもない、普通の、街の工務店だったそうです。

中川政七と公私ともに仲の良い北条夫妻。その事業再編・拡大には中川政七が与えた影響も大きかったといいます。二人はどのようにして今のスタイルを確立したのか—―。前・中・後編と、中川政七も交えた番外編の鼎談の、4本をお届けします。
株式会社北条工務店
創業昭和20年、奈良県を拠点に活動する工務店。「住まいの豊かさを深める」をコンセプトに、注文住宅の建築ほか、住宅リフォームやリノベーションなど、住まい全般に関連する設計・施工・管理を行う。2012年には別ブランドの「HJ」を立ち上げ、「暮らしの種をまく」をコンセプトとして、マルシェや暮らしにまつわるスクールなどのイベントも企画・運営。中川政七とは奈良の経営者仲間として公私ともに親しい間柄。

自分たちらしい家づくりとは…「家づくりって何なんやろ?」

日々手探りで、しかし強い意志を持ちながら北条工務店としてのブランドをブラッシュアップし、事業と組織をつくっていった北条夫妻。徐々にその成果は出始め、北条工務店を指名して家づくりを依頼するお客さんも増えてきました。

しかし北条夫妻はこれに満足せず、改めて家づくりについての問いを自分たちに投げかけるようになります。

建築家の多くは建築史の中での「文脈」や「位置づけ」を意識して自身の作品をつくるけれど、出来上がったものを見ると見た目は心に響かないこともある。

一方で、名もない人が手がけたり、施主が自身で工事したりした建築が、建築史の文脈には全くのっていないにも関わらず「おしゃれですね」と高評価を受ける場合もある。

そんな違和感を背景に、北条夫妻は「家づくりって何なんやろ?」と、自分たちの家づくりが目指す方向性について考え始めたそうです。
「建築家はどちらかというと作家性が大事なので、賞を取って有名になり、公共建築や美術館の設計などを目指されるんですね。

クライアントじゃなくて、同業者からの評価に興味が向いている世界で、それはちょっと違うなって思っていたんです。

ただ一方で工務店を見てると、ほかの業態に比べて文化度が低いというか。例えば服屋さんで20万円の靴を買ったとしたら、待ち時間にシャンパンが出てきたりとか、お店を出るまで荷物を持ってくれたりとか、高いクオリティのサービスを受けると思うんですよ。

それに比べて家の価格はすごく高いのに、サービスは雑だったりするわけです。自分たちの仕事は文化度を上げていきたいし、でも建築家が目指すような世界も違うし」(愼示さん)
そんな中、北条夫妻が心を惹かれたのは、リッチではないけれど自分らしい豊かな暮らしをしている、ヨーロッパの人たちの暮らし方でした。

建築という箱をただ提供するだけでなく、スタートから完成まで高いホスピタリティを提供しつつ、プロもそこに住む人も「いい」と思える家をつくりたい。

箱ではなく、そこに住まう人の暮らしが豊かになるような仕事をしたい。

「家づくりって何なんやろ?」

この問いに、北条夫妻は答えを見出していきます。

会社の成長をどう定義するのか

また、同時に会社としての成長についても考えていた北条夫妻。通常、工務店は高い売上や建てた棟数を最終目標にすることが多いそうですが、夫妻はその考え方に違和感がありました。

「売り上げが増えてくると当然社員も増えてきます。でも、人数が増えるとマネジメントが行き届かなかったり、社員や仕事の質にムラができたりするんです。

自社でもそういった問題が出てきた時に、自分たちは社員をどんどん増やすよりも、マネジメントの目が行き届く20人程度の規模をキープしながらやっていきたいと思いました」(愼示さん)

売上の大幅拡大や社員の増員を目指さず、一定のキャパシティを保つことを意思決定した一方で、「現状維持ではビジネス的には衰退している」と考えた二人。

会社の成長をどう定義するかと悩んだ末、夫妻は、いい家を建てるだけではなく、もっと手前のプロセスから暮らしに影響を与える会社を目指したい、と思うようになったそうです。

「勉強のために全国の工務店を回る中で、奈良に北条工務店があることを全国規模で知ってもらうためにはどう努力すればいいか、とずっと考えていました。

施工エリアは限られているけれど、奈良には、関西圏内には、北条工務店があることが憧れになるといいなと思ってて」(満李子さん)

マルシェや暮らしにまつわるスクールを開始

会社の成長と、ヨーロッパで見た人々の豊かな暮らし。この2つの要素が交わり、夫妻は北条工務店が建てる家の魅力の伝え方を、暮らし全体に拡張させることを決めます。

まず始めたのは暮らしにまつわるイベント。作り手に声をかけてマルシェを開催したり、暮らしにまつわるスクールを開いたりと、家を建てる前段から暮らしのスパイスになるようなイベントを数々と仕掛けていきました。

「例えば、今すぐ家を無垢のフローリングにしたい人って、注文住宅で家を建てようとしているようなフェーズの、自然素材の好きな人くらいしかいないと思うんですよね。

でも無垢のフローリングが好きな人の日常を考えると、オーガニック野菜にも興味がありそうなわけです。

僕たちが住宅で提供しているこだわった間取りや薪ストーブ、無垢のフローリング。そういったパーツを日常生活に落とし込んだらどんな世界観かと考えていき、マルシェの開催を見出しました」(愼示さん)

「家を建てる時じゃないと来られない場所だった工務店を、もっと日常レベルで関われるようにしたいなと思いました。それで2か月に1回、土曜日の3時間だけまずはマルシェをスタートしたんです」(満李子さん)
写真提供:北条工務店
写真提供:北条工務店
自分なりの豊かな暮らしづくりに興味がある人を多く集め、まずは暮らしをより楽しんでもらえるように。そして、そこで北条工務店を知ってもらい、いつか家づくりの役に立てるように。

暮らしに影響を与えられる存在になり、その人なりの幸せな暮らしづくりに貢献することへの挑戦が、北条工務店らしい「会社の成長」の糸口となったのです。

「間口は広く、敷居は下げない」

これは満李子さんが口にした印象的な言葉です。

暮らしを大切にする方々と出会う機会は広く設けながら、こと家づくりに関しては見学会・相談会を完全予約制にして、自分たちに本気で共感してくれるお客さんに来てもらう。

こうして北条工務店は今のスタイルを確立させていきました。
「中川さんから影響を受けた点の一つに、ブランディングで大事なのは、経営者がそもそも何がやりたいのかをちゃんと考えることが大事だ、という考え方があります。

市場起点ではなく自分起点で考える、と本に書かれていて。それがすごく刺さったんですよね。

僕らはもともとファッションが好きでした。自分起点で考えると、ファッション業界の動きとかを見るわけですね。そうすると視野が広がるというか。

例えばセレクトショップで服が売れなくなってきた時代に、ファッション業界では『ライフスタイル』という言葉を使い出しました。家具とかインテリア小物を売り出した時期が10年ほど前にあったんですね。

その動きを見ていたことで、自分たちも建築だけじゃなくてマルシェとか、暮らしにまつわるストーリーをつくりたいと柔軟に考えられたんだと思います」(愼示さん)

次なるチャレンジはホテル事業

マルシェやスクールを開催し、2020年6月にはギャラリーのオープンも果たした北条工務店。今後もその歩みを止めず、2021年夏にはホテルのオープンという新たなチャレンジを予定しています。

「『ホテルの日常化と住宅の非日常化』と自分たちはよく言ってます。『住むように泊まる』っていうキャッチフレーズって、ホテルでよくありますよね。『カフェのような家』っていうのもよくある。

日常と非日常、住宅とホテルが交じりあっている世の中で、住宅を手がけている会社が、高いレベルの建築と豊かな時間を提供できると、今まで誰もできなかったような世界観をつくることができるんじゃないかなと思って、ホテル事業を始めると決めました」(愼示さん)

もともとホテル事業にチャレンジしたいとぼんやりと考えていた北条夫妻ですが、決断には中川政七からの声がけが大きく影響したそうです。

「中川さんから、大阪で一緒に食事をしているときに、『ホテルやらへん?』って言われたんです。中川さんに奈良でのホテル事業についての依頼がきてたみたいで。で、すぐ『やります』って答えました」(愼示さん)

二つ返事で決断した愼示さん。のちに中川政七に聞くと、逆に中川のほうが「お金とか大丈夫かなって焦った(笑)」と驚いてしまったというエピソードもありました。

「中川さんから教わったもう一つ大事な点があって。結局、覚悟の部分です。

誠実に仕事をしていたら、自分が思っている以上に早くチャンスが回ってくる。その時に『今はまだ時期尚早だから』と断ると、いざ準備できた時にはもう話が来ないわけです。

大事な局面では経営者としてすぐ決断し、勝負をかけるところを見極めることを学ばせてもらいました」(愼示さん)
悩みぬきながらつくり上げてきた“北条工務店らしさ”により、「何でもない、街の普通の工務店」から「自分らしい豊かさを見つけるための、暮らしのパートナー」へ躍進した北条工務店。

そのやわらかくも凛とした物腰や紡ぎ出す言葉からは、「自分たちが大切にしたいのは何か」にとことんこだわる、夫妻の芯の強さを感じました。

北条夫妻が目指すのは、便利で機能的な家の提供だけに限定されない、その人にとって価値のある暮らしづくり。工務店の域にとどまらないチャレンジは、まだまだ、たゆみなく続きます。

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INFO

北条工務店

北条工務店:
奈良県奈良市三碓2-4-15-1
https://www.hojoh.co.jp/

HJ GALLERY:
奈良県奈良市三碓2-4-13-2
https://www.hj-g.jp/

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文:谷尻純子 写真:奥山晴日

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